校長コラム
令和5年度 校長コラム2
【2学期始業式講話から】
今日9月1日は、ちょうど100年前、関東大震災があった日です。そのため今日は「防災の日」とされています。もし、大地震があったら、大雨、洪水があったらなど、日頃から対策を考えておく必要があります。「天災は忘れたころにやってくる」寺田寅彦の言葉です。
さて、2学期始まってすぐ、輝陽祭があり、体育祭があります。中3はオーストラリアへの修学旅行、音楽発表会もあります。2学期の4か月間に大きな行事があります。毎年同じことを言いますが、自分がやれることがあるのに手伝わない。これは「ケチ」です。しかし、限界近くまでやって、周りが動かないことに腹を立てて相手を責める。こうなると、私がこれだけやっているのにと「のに」が出る。「ケチ」も「のに」もダメで、お互いを配慮しながら充実したものにしてほしいと思います。
今日はすこし「探究」についての話をします。今、高校は、総合学習ではなく「総合的な探究の時間」になっているのは知っていますか。中学生は高校になると総合学習ではなくなります。キーワードは「探究」です。今から15,6年前、京都の堀川高校という学校が学科に「探究科」という科を設けて話題になりました。
その効果は絶大で、難関大学合格数が激増した。つまり、自分で研究するような探究が直接大学受験と関係なさそうだが、実は大学の一般受験に効果があったということで「堀川の奇跡」と呼ばれ全国から視察がありました。
10数年経ち現在再び「探究」が注目されているのは、社会の変化、社会のニーズがあります。新聞によると、新社会人が生涯一つの会社に勤めるかどうかというアンケートで、そう思うは24%しかなく、つまり3/4はいつか転職するか、起業するということになる。その場合、自分の人生設計の中で、何をやるのか、どう切り抜けるのか、何ができるか?という話になる。多くの人がこういう課題に突き当たる社会になって来ている。
今55歳くらいの人は従来通りでも何とか逃げ切れる世代かもしれませんが、皆さんはそうは行きません。言われたことをもくもくと行うだけでは社会では通用しにくくなっている。自分で考え、探究する必要が出てきています。
そして時代を経て、実は大学受験でも変化が起きています。一般受験以外に「総合型選抜」での募集枠が急激に増えている。大学受験は、一般受験が50%、総合型選抜を含む一般受験以外が50%の時代になってきています。
そうした時に実は「探究」と総合型選抜は非常に相性が良い。入試の問題を見ても、SDGsに絡めて何をやりたいか、何を研究してきたかを論文で述べたり、面接で口頭試問されたりすることが多い。SDGs関係は便利で、17の項目があり、人権から地域発展から、国際理解から異常気象から海洋問題まで何でもある。こういう内容を、準備研究して行けば、一般受験では到底合格できない大学でも、総合型選抜では合格の可能性が出てくる。理想的な極めつけは、「テレビの博士ちゃん」に出てくるようなマニアックな学生です。
つまり、極論すると、高校では(中学からならもっと良いが)勉強と部活動だけでは不十分で、中学、高校生活を通してもう一つ「探究」つまり、自分の研究課題が必要な時代になって来たということです。高3生はさすがにこれからというのは急すぎて無理があるが、1,2年生はまだ間に合う。自分の将来やSDGsなどの関連の研究を自分の進路と絡めて積極的に進めるべきです。
その点本校は、「探究」に関した素材があふれている。例えば、メディカルプロジェクトは、持続可能な医療制度、高齢者福祉、医療費の問題、健康寿命の課題、在宅医療から何でも「探究」課題になる。もちろんICT未来創造プロジェクトは、ICT、チャットGPTの未来、ロボット技術などすべて課題になる。
教養講座にしても、手話は福祉、人権に絡み、中国語は国際理解、入門野田学は持続可能な地域社会とのかかわりなど。また、海外語学研修や台湾修学旅行なども探究につながるし、本校はそういう意味で、宝の山です。
もちろん学校とは別のところのテーマで自分の研究を重ねても良い。要するに、一番大切なのは先ず、何が課題か発見する能力、つまり、「課題発見能力」が必要になるということです。日常のちょっとしたことでも疑問に思って研究する態度が必要です。
例えば、「超の整理法」で有名な、野口悠紀雄に「2040年の日本」という本がありますが、その中に車の自動運転の話があります。実は車ほど効率の悪い乗り物はない。よく考えるとほとんど駐車している。動いているのは一日のうち数%くらい。私にしても、通勤の朝、帰りの30分以外は、一日23時間止まったまま。駐車するためにあるような状態です。
もしこれが、将来車が自動運転になり、スマホで呼べばすぐ近いところの車が来て運転しないでゆっくり休んで帰れるなら私は車を持たないし、多くの人も自家用車が必要なくなる。
さて、そうなるとどういう社会になるか?こういうことを考えてみるのが大切です。例えばマンションなどの駐車場がいらなくなるという。土地利用の概念が変わる。運転免許がいらなくなるだろう。事故が無くなるから自動車保険がいらなくなる。他にどうなりますか?こういう研究も面白いことです。こういうことにいち早く気付いた人が事業で成功するのだと思います。
1学期終業式に、リープフロッグという、優れているために逆に劣っていたものに追い越される話をしましたが、私が話した以外に、このリープフロッグ現象に何がありますか?こういうことも研究対象になります。自分で調べ考えてみる。これは単に暗記が得意ということとは違う能力です。つまり、「探究」につながります。
学校としても様々対応を考えていますが、皆さん自身も「探究」を意識して学校生活を過ごしてほしいと思います。